惑星のダンス
「──祐実ちゃん」

スタジオには観客が入っている。彼ら彼女らは、中央で料理の腕を振るっている六人のタレントから目を離さない。

ゆえに海は眼鏡とマスクだけの簡易変装で、壁に寄りかかっている顔なじみに声をかけた。

祐実は小さく笑って片手を上げた。その隣に歩を進める。

彼女は客ではない。関係者側の人間だ。

「愛には言ってないんだっけ、収録見てるってこと」

「うん。見られてるなんて知ったら平常心ではいられないだろ」

「まあね」

ふっと祐実が目を細めた。唇の端を吊り上げる。

「言った方が面白かったかな、とでも思っているんでしょう」

「バレた」

海はにっこり笑った。隠す気もない、意味もない。
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