惑星のダンス
とまあそんなことはどうでもよくて。

愛に詰め寄ろうとした矢先、彼女は窓の外を指さした。

厳密には近づいた空を。

「“天空を泳ぐ”というからには天空に近づいてみるべきかと思って」

「……そういうことは先に言え」

どうしていつもいつも言葉が足りないのだろう、この女は。

天は腰を落ち着けて、そろそろ頂点に到達するゴンドラから青空を見上げた。

雲がまばらに白い模様を描く。それでも梅雨のさなかに晴れたのは僥倖だった。

「俺の日頃の行いがいいからだな」

「神様のお情けだよ」

「なんでそう要らんことばっかり……」

引きつった顔を向けると、愛はまだ空を眺めていた。
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