【短】君と、もう少し
「藍沢さん、顔色悪いけど大丈夫?」
「あ、はい!大丈夫です!」
委員会の教室に入るなり、鳴海先輩と鉢合わせして、一瞬面食らっていると、つつつ、と嫌味じゃないくらいの距離感を保って鳴海先輩が近付いてくる。
「駄目だよ。そんな嘘付いちゃ。顔が助けてって、言ってる…」
「う…」
核心を突かれて私が黙り込むと、鳴海先輩は、
「参ったなぁ」
そう言ってから、少しだけ困った顔をする。
「んー…そんな顔されちゃうとさ、男としたら抱き締めずにはいられないんだけどな…?」
「……!?えっ!?」
「あはは。半分冗談だよ。けど、次そんな切なそうな顔見せたら…容赦なくさらうから。覚悟してて」
そんな爆弾発言をさらりと爽やかな顔で投下されて、私は何も言えなくなった。
え、鳴海先輩ってば、そんなキャラでしたっけ……?
書類を配り始めた鳴海先輩の後ろ姿を見て、顔が赤くなるのを止められなかった。
それから間もなく、会議が始まったのだけれど、私はさっきの鳴海先輩の言葉を繰り返しては、赤くなったり青くなったりしていた。
そうしてほぼ上の空で終わった委員会。
外は大分日が落ちて来ていて、私はのんびりと窓の外を見ながら廊下を歩いていくと、昇降口に辿り着いて靴を履き替えて、色んなことを考えた。