【短】君と、もう少し
「奈々ちゃんは積極的だなぁ〜」
「だって、奈々、早く淳太くんと二人きりになりたくて〜」
私と舞はそこで溜息を吐いた。
それは、もういつものこと。
「早く行けば?」
「彼女待ってるよー?」
私達の冷たい視線に少しだけ怯んで、淳太は何かを言いたげにしていたけれど、すぐに気を取り直してその奈々ちゃんとかいう女の子と、教室を出て行ってしまう。
「ねぇー?はーるーか!こんなんでいいのー?」
「…良いも悪いも……」
「ほんっと、ばかな男ね」
「…だよね…?」
「でしょーが」
自分でもなんであんなヤツを好きになってしまったのか、分からない。
ただ…ただ、私よりも20センチ以上は高い、淳太の視界を自分で埋め尽くしてみたい…そう本能的に思ってしまい…そこが、私の恋の始まりだった。
言葉を交わす度に、ふわりふわりと淳太を想う気持ちが熱を上げる。
淳太に軽く触れられるだけで、心が淳太を好きだと叫ぶ。
「はぁー……ほんと、ドツボ……」
「まぁ、遥の容姿とその性格なら、他にもいっぱいいい男は寄って来るわよ」
「舞、それ…全然慰めてない…」
ガックリと肩を落として、窓の外を何気なく覗くと、楽しそうな淳太とその彼女。
私は溜息を吐いてから、鞄にテキスト達を入れて帰る準備をした。