【短】君と、もう少し
重い足取り。
好きってこんなに、苦しい気持ちばかりなのかな?
さっき、淳太の首筋に見えた他の誰かの"証"。
いつもいつも、嘘を吐く淳太。
彼女がいるのに、他の子とも軽く愛を交わし合う。
平気でそんな事ができる淳太を嫌いになれたらいいのに…私の想いは膨れるばかりで、そこらじゅうに溢れていく。
「あぁっ!もうっ!なんか理不尽!」
くしゃくしゃとミディアムヘアの真っ直ぐな髪を掻き乱してから、私は早歩きで家路を急いだ。
帰り道には、絶対に心に決めるんだ。
淳太のことなんか好きでいるのをやめようって…。
もう、線を引こうって。
だけど…。
次の日、淳太の顔を見てしまうと、気持ちがすぐに揺らいで、やっぱり好きなんだって想いが勝る。
なんで、こんなに私の気持ちを揺さぶるの?
淳太からしたら、私なんて平凡なクラスメイトでしかないはずなのに。
『遥ってば癒やしだよなー』
毎回繰り返される言葉。
そう、結局…私はそれくらいにしか思われてないんだ…。
淳太にとっての私はただの面倒見のいいクラスメイトでしかなくて…それ以上でもそれ以下でもない。
だから尚更質が悪い。
「ほんと…嫌いになれたらなぁ」
ぽつりと呟き、私はさらりと風に揺れた前髪を押さえた。
『遥はさ、良い子だよな。真面目で…』
少し前に言われた言葉が胸に痛い。
好きなら好きを貫きたいけど…今は無理だ…。
どうしても…自分の感情が拒絶反応を起こす。
そんな風に思考が留まると、気持ちはどんどん悪い方にばかりに傾いていった。