【短】君と、もう少し
「はぁー…心が休まらない…」
「でしょーね。鳴海先輩って、学先輩と同じくらいイケメンだし?好青年だもんねー?」
学先輩というのは、舞の彼氏である一つ上の先輩で、鳴海先輩のクラスメイト…しかも、学年別イケメン2トップ…。
勿論、もう一人は言わずもがな鳴海先輩だ。
「学先輩も鳴海先輩も格好良いよ?でもさ?!舞みたいな美少女でもない平々凡々な私を好きとか!マジ天変地異だよ〜!カタストロフィだよ〜…」
私は泣きたくなって、机に突っ伏す。
すると、その後頭部の辺りに少し低めの声が落ちてきた。
「遥は別に平々凡々でもねーけどな」
「…淳太…?」
どすん、と私の隣の席を陣取って、私の方を向く淳太はどう見ても怒っているようで、機嫌が悪い。
「で?どーすんの?」
「は?」
私は淳太の発した言葉の意味が分からずに、変な声が出た。
それに対して、何故か更にイライラとした態度の淳太。
「告白。されたんだろ?鳴海とかいう奴に。それで、遥はどーすんの?って聞いてんの」
「…っ!それ、別に淳太に関係なくない?」
あまりの態度の悪さに、流石の私もカチンときて、思わず声が低くなる。
「私が告白を受けても受けなくても、淳太には関係ない」
「お、おい!遥!」
それだけ言うと、淳太の制止も聞かずに私は席を立ってそのまま廊下に出た。
そして、泣きたくなるのを我慢してから、トイレまで足早に歩く。
「あー…もー…いやだぁ……」
個室に入ってこそこそ自分の感情に浸る気にはなれずに、鏡の前で唸っていると、不意をついてギィっと勢い良く、菜々ちゃんだか亜衣ちゃんと淳太に呼ばれていた女の子が入ってきた。
「藍沢さんだっけ?」
「…そうだけど?」
「あのさ?淳太くんの気持ち、大切にしてよね!」
そして、自分の言いたいことだけ言ってすぐに出ていく。
私はそんな意味不明な言葉を浴びせられて、暫く瞳をぱちぱちしてフリーズした。
淳太の気持ち??
何それ?
理由が分かんない。
大切にも何も、色んな意味で傷付いているのはこっちの方で。
本当に大切にしてもらいたいのもこっちの方だ。