【完】ファムファタールの憂鬱
過去の出来事
そう言えば、と…そこでふと思いつく。
幼い頃、凄く大好きだった男の子に、よく虐められたなぁと。
あの時はそれが本当に嫌で、毎日泣いて過ごしてた。
なんで、こんな風にされなきゃいけないの?と…。
もう、出来ることなら自分が引っ越すか、向こうが何処か遠い所に行ってくれないかと思うくらい…。
大好きだと思っていたから、余計に切なくて、悲しくて。
でも、泣くと余計に虐められると分かっていたから、私は膝を抱えて何時も一人涙を堪えていた。
そんな頃、いつの間にか家の小さな庭にちょくちょく入り込んでくる黒い猫がいて…。
その子のことを撫でながら、いつも涙を溢して呟いていたんだ。
『出来ることなら…私のことをちゃんと好きって言ってくれる人がいいのにな…』
なんて。
もしかしたら、その日から始まっていたのかもしれない。
わたしのこの特異体質は…。
だって、それくらい辛かったんだ。
「お前なんか、ブスだし、近寄んな!」
「おいブス静紅!どけよー!ブスは道の真ん中歩くな!」
なんて言われたり。
お気に入りのヘアゴムで綺麗に結んだ髪を、思い切り引っ張られたり。
毎日毎日、そんなことの繰り返し。
そして、ある日、とうとう私は爆発した。
「○○くんのことなんか大嫌い!」
…あれ?
あの時の男の子は何くんって名前だったっけ?
まぁ、昔のことだしどうでもいいか。
そんなことよりも…。
自分がブスだって言われたこともショックだったけど、一番嫌だったのは、精一杯可愛くなろうとして、悪戦苦闘の末やっと綺麗に編めた髪を崩されたこと。
その時、お気に入りだった髪飾りがバラバラに壊れてしまって、それを見た時…もう駄目だと思った。
そんな私にしてはドストレートな拒絶発言を発してから、その男の子は私に近づかなくなったことだけは覚えてる。
心の底から、ホッとしたから。
その代わり、…今度はこの体質に悩まされることになったんだ。