【完】ファムファタールの憂鬱
冗談のような本当の話
少し時間を巻き戻そう。
それは、昼間、…突然起こったぷち悲劇。
「ねぇー?キミ可愛いねー」
その日のカリキュラムを終えて、いつものように大学キャンパス前から出ているバスに乗り、家の近所の繁華街へと降り立った。
大学に入って独り暮らしを開始したので、夕飯に何かいいものはないか、とお惣菜屋さんを物色しながら、あれこれ買い物をしている時。
私、神咲静紅(かんざきしずく)は、背後から、どこぞの芸人よろしく見た目からしてチャラい男に声を掛けられた。
「………」
私はいつものように、完全無視でツカツカと歩を進める。
こういうやつを相手にしてたら、時間が勿体無い。
そんな思いで…。
けれど、この日はいつもと少し違ったんだ。
「俺と付き合ってよー」
「……これから、用事があるんで」
ここまでは良かった。
仕方がないから、何時のように、かるーい告白。
かるーい会話。
でも…その後、不意を突かれた攻撃。
もう聞き飽きていて、一番嫌な言葉を放たれた。