【完】ファムファタールの憂鬱
無邪気な小悪魔
「しーずくちゃん」
「あ…じんくん」
あれから、彼女は明らかに変わった。
というか、俺が彼女の周りの男払いをしているのが功を奏してか、彼女はにこやかに笑うことが増えた。
自然な彼女の仕草や表情を見ていると、こっちまで幸せになれるんだから、不思議だ。
「静紅ちゃん、飴食べる?」
「え?いいの?ってじんくん、いっぱい持ってるねー」
ポケットから、手に掴んだ大量の飴玉を出すと、彼女は楽しそうに微笑む。
あー…そういうの、可愛すぎてしんどい…。
こんな風にときめかせてくれちゃうのは、彼女だけなのに…張本人は相変わらず、そんな俺の感情には気付かずに、無邪気だ。
「どれがいーい?」
「んー…ソーダ味かなぁ。それか…あ。レモン味もいいね」
そう言って、俺を見た彼女は自然と近くなっていた距離に、ハッとしたようで…。
「あ、あの…ごめんね?」
「んー?」
恥ずかしがるのを、少しでも和らげるために、ほんの少しの気付かないふりをする。
そうすることで、彼女の肩の力が抜けることを知ったから。
「ソーダ味かレモン味ね?じゃー…2個ともあげる」
「いいの?」
「だって。俺こんなにいっぱい持ってるし。早く食べないと溶けちゃうかもだし?」
「そっか。じゃー…遠慮なく、頂けます」
こういうさ、無邪気なのってなんて言うんだっけ?
あー…天然小悪魔…ってやつなのかもね?