【完】ファムファタールの憂鬱
「最近さぁ、この辺で子猫見掛けてない?」
「…え……?」
相変わらず、風に身を委ねているじんくんは、どこまでも自然体でそのまま写真に収めたいくらい。
でも…なんで、今此処で…子猫?
「…んーと、なんで?」
「俺さぁ、少し前にこの辺で子猫見掛けて。すっごい可愛かったから、連れて帰りたかったんだよね」
嫌な予感がしつつも、一応私は確認をする。
「そ、そうなんだー。それって…どんな感じの子?」
「ふわふわの毛の長い真っ白の子」
「へ、へぇー…」
それは、間違いなく、じんくんが言ってるのは、変身した私のことだった。
そんなに連れて帰りたかったなんて思ってくれてたのかなんて、ちょっぴり感激しつつも、内心ヒヤリする。
まさか…バレて、やしないよね?
完全に固まってる私のことを不思議に思ったのか、じんくんは、くすくす笑ってこう言って来た。
「そういう子がタイプだとかもしかして思ってる?」
くしゃくしゃ
髪を不意に撫でられて、付けていた髪飾りが少しズレてしまった…。
それをじんくんは、
「あ、ごめんね?」
と、すぐに直してくれる。
あぁもう、そういう所が好きなんですけども……。
それが言えない自分がしんどい……。