【完】ファムファタールの憂鬱
「こ、子猫のことはちょっと分からないやー。ごめんね?お役に立てなくて…」
「んーん。気にしないで?それに多分またどこか出逢えそうな気がするから」
「そ、そっか…」
えっと……それは…私的にちょっと、いや…かなり困るのですが…。
とは口が裂けても言う訳にはいかず、私は曖昧な笑みでその場をなんとかやり過ごした。
「じんくん、猫好きなの?」
「ううん。どちらかというと犬派」
「じゃあなんで…?」
「それは……内緒」
「えー?」
そうはぐらかされると、逆に追求したくなっちゃうんですけど……。
でも。
微笑むじんくんが、なんだかとても楽しそうで、幸せそうで…それ以上は突っ込むことは出来なかった…。
「静紅ちゃんは、猫好き?」
「え…?あ、ま、まぁ…ね」
自分が変身するものを嫌いに離れない…悲しき性……。
これはきっと、誰にも分かってもらえないだろうな…。
そんな風に思ったら寂しくなった。
ねぇ、じんくん?
私がその猫だって知ったら…きみはどう思いますか?