【完】ファムファタールの憂鬱
そして、今…漸く家に着き、バタンといささか乱暴に、玄関のドアを締めた所、なんだけれども…。
私はそれと同時に…。
「は…っくしゅんっ」
誰にも咎められないような、盛大にくしゃみをした。
それは、この世の中で…というより私にとって、一番辛くて苦しい合図だった。
ぼわんっ
くしゃみをした途端、勢い良く出たのは、白い煙のようなもの。
それと一緒に現れたのは、冒頭でじっと鏡を見ていたのと同じ、白い子猫。
その子猫は、もう一度ふるふると頭を振るとくわっと口を開いてこう叫んだ………。