【完】ファムファタールの憂鬱
「はぁはぁはぁ…、も、だめ……くっしゅんっ」
ぼわん
降りしきる雨の中…。
私は久しぶりに、子猫の姿へと変身した。
気持ちは果てしなく惨めで、ぼろぼろと涙が零れた。
「も、やだ……」
掠れた、声。
でも次の瞬間、私は全身が震えた。
「し、ずく…ちゃん?」
後を追って来たらしい…じんくんが子猫になった私を見て固まっていたから……。
「じ…ん、くん…」
私はあまりのことに、猫の真似をすることも忘れて、名前を呼んでしまった。
「静紅ちゃん、なの?」
じんくんは、静かに私の前に片膝をついてから、私の顔を覗き込む。
「………う、ん」
「…そっか」
じんくんはそう言うと、少し黙った。
でも、すぐに私のことを掬い上げて、自分の胸の中に閉じ込めた。
「じ、じんくん…?…あの…」
「よかったぁ…他のやつに先に見つからないで」
「……え?」
「ん?あー…なんでもない。とりあえず、場所変えよっか」
「あ、うん…」
変身した私を見ても、何も言わず抱き締めてくれたじんくんに、なんとも言いようのない感情が湧いた………。
ねぇ、こんな状況の中で…今、きみは何を思っていますか…?