【完】ファムファタールの憂鬱
「んもー!!またなのー!?いい加減にして!」
なんと、その子猫は、しっかりはっきりとした人間の言葉で、そうやって大声を出すと、ふわふわのうっとりするくらい美しい肉球で、床をたんたんっと踏んで、憤る。
「本当に…一体私が何したって言うのよー!」
なんとか、あの状況から命からがら逃げてきたはいいけれど、子猫……いや、私…は、鏡の中の自分を見て首を大きく振り、項垂れる。
ああ、いやだいやだ。
本当にいやだ。
そんな気持ちで泣きそうになる。
だけれど、そんなことをしても状況は変わらない。
もう、皆さんには、この現状からして、全て悟られていることだろうとは思うのだけれど…。
私は、大分前からこの体質に切実に困っているのだ。
そう…猫に変身してしまう、この体質に…。
…もういっそのこと、人間辞めたい。
ああ…半分以上辞めてるも同然か……。
そう思って、深い溜息を吐いた。