【完】ファムファタールの憂鬱
Epilogue
謎を解くための距離感
そのまま、空き教室まで連れてこられて、じんくんの香りがするタオルで、かしかしと頭を拭かれた。
「風邪、引かないと良いんだけどなぁ…」
「あ、あの…じんくん?…その…驚かないの?」
「ん?驚いてるよ?」
いや…あの…全然そんな風には見えないんですけども…。
「はは。嘘って顔してる。でもほんと。」
そう言うじんくんの瞳には、優しさと慈しみの光がが灯っている。
乾き始めた私の頭を優しく撫でながら、更に優しく微笑む。
そのなんでもないような、優しさがくすぐったいような、心地よいような気がするけれど…。
警戒心が、心を逆撫でる。
「じ、じんくん?」
「んー?」
「も、いいよ?」
「何が?」
「そうやって庇ってくれなくても……」
最後の方は蚊の鳴くような声になってしまう。
でも、じんくんは私を撫でることをやめずに、微笑むこともやめなかった。