【完】ファムファタールの憂鬱
夢に見た瞬間…
「泣かないで…」
「ん…。」
「ねぇ…?静紅ちゃん?」
「…?」
「この前の答え、分かった?」
それは…人を好きになるのに理由がいるかどうか…という問い。
私は少し間を開けてから、「ないと思う」とだけ言った。
「だよね…俺もそう思う」
じんくんはどこか遠くを見ている。
私はその視線の先を追い掛けていく。
「あのさ…」
「…うん…………」
言葉がなくても、その先に生まれる言葉は容易くイメージ出来る。
…私は、その言葉を受け入れようとしている。
まだ、怖い。
でも…それは乗り越えなきゃならない。
私は、じんくんの方に向き直り真っ直ぐに顔を見た。
私も、今…素直になろうと思う。
何時までも前に進まず、子供のままではいられない。
怖がっていてばかりで、同じ場所に佇んでいてはいけないから。
「じんくん、…あのね?私もじんくんに言いたいことが…あるんだ…」
そして、少しの沈黙を守って、私は息を吐いた。
「あの…」