【完】ファムファタールの憂鬱
「だぁめ。俺から言わせて?」
「でも……」
少しずつ、近付いていく…二人での間。
それが泣きたくなくほど優しさで溢れていて、下を向く。
きゅん、と高鳴る胸の音が、じんくんに届いてしまうんじゃないかと思うと、もっともっと気持ちは高ぶって、留まることなくそのままゆるゆると弛緩していく。
「静紅ちゃん…」
「……はい」
やっぱり、怖くて体が強張るけれど、じんくんはそっとそんな私の背中をぽんぽんと撫でながら、私の顔を覗き込んで笑った。
「そんな、緊張しないで、俺にも伝染る」
「うー…そんなこと言われても〜…」
「大丈夫だよ…俺は絶対に静紅ちゃんのこと傷付けない」
「じんくん……」
そして、おでこがこつん、と触れる距離まで来ると。
スッと一瞬だけ静かに呼吸を整えたじんくんが、口を開いた。