【完】ファムファタールの憂鬱
「もう…分かってるとは思うんだけど。俺は…静紅ちゃんが…好き。世界の中で、誰にも負けないくらい…大好きです」
「じんくん…」
その言葉を聞いて、背筋から這い上がる熱。
あぁ、やっぱり……。
駄目なの?
こんなに、こんなに、想っているのに…。
私はそう思ってじわりと浮かぶ涙を瞬きをすることで、なんとか、引っ込めた。
そして…。
駄目だと分かっていても、これだけはきちんと告げようとして…じんくんの瞳を見つめる。
そこには透明の私がいて、なんとか頑張れ!と言われている気がした。
「……。私も…私も、じんくんが好き。多分今まで好きになった誰よりも。ううん。過去なんていらない。今、この世の中で一番じんくんが、好き」
そう、言い終わると、じんくんは私のことを真正面からぎゅうっと抱き締めてくれた。
「やっと…手に入れた」
そう言って。