飛鳥くんはクールなんかじゃない
「この、バカ花帆」
飛鳥くんの怒った声に、妙に泣きそうになった。
「電話、繋がってんだから助け求めろよ」
「ご、ごめんなさい」
「……ったく。焦らせんな」
怒ってる。すごく怒っているけれど、それと同じくらい心配してくれているのが伝わってくる。
自分の髪をクシャッとかいた飛鳥くんが「間に合ってよかった」とこぼしたのを、私は聞き逃さなかった。
「バッカじゃねぇの!?」
飛鳥くんの存在に安心していると、次は隣で掘田くんが珍しく怒った様子で凛ちゃんに声を荒げたのが聞こえた。
「そんな格好で歩くとかマジでないよ、凛ちゃん。男ナメてんの?」
「はぁ?助けてもらったことにはお礼するけど、なんでそんなに怒られなきゃいけないわけ?」
あんなに怒ってる掘田くんは初めて見たかもしれない。
さっきまで掘田くんにイライラしてた凛ちゃんもここに来て限界になったのか、負けじと反論して言い合いになってしまった。