飛鳥くんはクールなんかじゃない
「一華ちゃん!」
急いで駆け寄ったけれど、そんな私よりも早く、転んだ一華ちゃんの目の前に手を差し出した人物が。
「……なにしてんの」
「す、すみません」
それは、呆れた顔を浮かべた飛鳥くん。
転んだ瞬間の彼女の一番近くにいた飛鳥くんが駆け寄ったんだ。
飛鳥くんは口数は少ないけれど、とっても優しい人。目の前で転んだ女の子を無視するだなんて、そんなことは絶対にしない。
わかってる。わかっては、いる。
「あ、ありがとうございます、渡くん」
「ん」
けど、そんな飛鳥くんの手を握った一華ちゃんを見て、凛ちゃんとの会話がやっぱり浮かんで来た。
『もし渡くんに彼女ができたら、花帆どうする?』