飛鳥くんはクールなんかじゃない
……あのとき、はっきりと嫌だと思った。モヤモヤもした。けど、理由はわからなかった。
ずっと一緒に過ごしてきた大切な人だから。それがなくなってしまうと寂しいって思ったんだと思う。
……けど。違う、かもしれない。
「わ、渡くんっ、手、手……!もう大丈夫ですから!」
「また転ばれたら困る。早く花帆のとこ戻って服乾か………花帆?」
一華ちゃんの手を引いて浅瀬から出た飛鳥くんは、近くまで来ていた私の存在に気がついて足を止めた。
それと同時に、パッと一華ちゃんの手を離す。……まるで、マズイところを見られたと慌てるかのように。
「一華ちゃん、大丈夫?」
そんな飛鳥くんに気づかないふりをして、私は濡れてしまった彼女に声をかけた。