飛鳥くんはクールなんかじゃない
またモヤモヤしてしまった自分に、気づきたくなくて。
この気持ちに名前をつけられるところまで来ている気がしたけれど、なんだか怖い。
「早く海の家行こう、一華ちゃん。着替えとか持ってきてない?」
「えーっと……、あ!いっくんの鞄に確かあったと思います」
「じゃあ、それ持って早く着替えよう」
飛鳥くんの視線が痛いほど突き刺さってきたのがわかったけれど、なんだか顔を見ることはできなかった。
……見てしまったら、止まらなくなりそうだったから。
パラソルの下まで行くと、一華ちゃんは迷うことなくお兄さんである菊川くんの鞄から着替えを取り出した。
けど、その手はわずかに震えていて。