飛鳥くんはクールなんかじゃない
凛ちゃんに続き、一華ちゃんの好きな人まで知ってしまった。
「そっ……か」
凛ちゃんのときは話を聞くだけで幸せだったのに、一華ちゃんの話はどうしてこんな気持ちになるんだろう。
やめて、なんて思う権利、私にはないのに。
「一華、大丈夫?」
「……あっ、いっくん」
大切なことを教えてくれた彼女に素っ気ない返事しかできない私は、駆け寄ってきてくれた菊川くんの登場になんだかホッとしてしまった。
「着替えておいで」と心配する菊川くんの声がなんとなく耳に入るけれど、2人の会話に耳を傾けるほどいまの私に余裕はなくて。
「佐藤さん?」
菊川くんに名前を呼ばれてハッと顔を上げると、もう一華ちゃんは海の家の方へと1人で歩いていた。