飛鳥くんはクールなんかじゃない



「……あ、菊川くん」

「大丈夫?ぼーっとしてるみたいだけど。ごめんね、一華が迷惑かけて」




眉を下げて謝る菊川くんは、やっぱり素敵なお兄さんだと思う。



そんな菊川くんの大切な妹の恋をよく思わない私って、性格曲がってるよね、きっと。




「あ、それ。飛鳥のパーカーでしょ?相変わらず過保護炸裂してるね」

「え?」

「そーれ。どうせあいつに着てろとでも言われたんでしょ?」



にこりと笑う菊川くんは、どうしてそんなことがわかるんだろう。


私が驚いたのを図星とみたのか、彼はクスクスと笑った。




「……菊川くんって、本当にお兄さんしてるよね」

「え?」

「なんか、みんなのことよく見てる」



その観察眼、私も欲しいくらいだよ。



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