飛鳥くんはクールなんかじゃない



「菊川くんはきっと、人の気持ちに左右されることなんてないんだろうな。私なんてブレブレで……」

「佐藤さん……?」


なんだか自分が情けなく思えてきて、自然と視線が下に向く。



私はいったい、どうしたいんだろう。


それすらよくわからなくて、もう考えることをやめたくなった。



ポン、と。私の頭に優しい菊川くんの手が乗ったのはその直後。


撫でられるわけでもなく、ただ乗せられただけのその暖かい手は、私の不安定な気持ちに寄り添ってくれるようだった。




「僕だって振り回されてるよ。特に、一華と海にはね」


そうは言っても少し楽しそうな菊川くんの声に、なんとなくその様子が浮かんできた。



可愛くて天然な一華ちゃんと、自由奔放な掘田くん。振り回され方は違っても、菊川くんは絶対に2人を放ってなんておけない。



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