飛鳥くんはクールなんかじゃない
「そんな完璧な人なんていないんじゃない?誰だって自分の気持ちには振り回されるもんでしょ。……あの飛鳥ですらそうなんだから」
「え?飛鳥くん?」
飛鳥くんの名前で思わず顔を上げると、目の前の菊川くんはニコリと笑った。
……と、ほぼ同時。
「離れろ、花帆」
私の肩がグイッと後ろにひかれ、目の前にいたはずの菊川くんとの距離が離れた。
「花帆に触んな、一成」
「ほらね、佐藤さん。だから言ったでしょ?」
後ろから不機嫌な飛鳥くんの声。前から楽しそうな菊川くんの声。
こんなモヤモヤしたときに飛鳥くんに触れられるのが予想外過ぎて、不覚にも心臓はドキンと跳ね上がった。