飛鳥くんはクールなんかじゃない
「……はひふんほ」
「無防備な花帆が悪い」
少しムスッとして言う飛鳥くんを、なんだか可愛いと思ってしまった。
ヤキモチみたい……なんて。
自分に都合のいいように考えて嬉しくなってしまったところに、「花帆ちゃん」と可愛らしいソプラノが聞こえた。
ドキッ。
意思とは別に、反射的に私に触れる飛鳥くんの手を振り払う。
行き場をなくした飛鳥くんのその手を見て、なんだか無性に切ない気持ちになった。
……なにしてるの、私。
「……あ、一華ちゃん。おかえりなさい」
「ただいまです。すいません、ご迷惑おかけして」
「迷惑だなんて。全然そんなことないよ」
申し訳なさそうに謝ってくれている一華ちゃんに、何故だかわからないけれど罪悪感が押し寄せる。