飛鳥くんはクールなんかじゃない
「あぁ」
「どこで?」
「一成のとこ」
初めて聞かされた事実に驚きを隠せない。
聞いてないよ、飛鳥くん。しかも菊川くんのとのろって……。
一瞬、一華ちゃんの顔がチラついた私はきっと嫌な女だと思う。でも、どうしてもそれが一番最初に頭に浮かんでしまった。
「いつからなの?」
「珍しいな、花帆が食いつくの。昨日からもう始めてる。夏休み期間限定でな」
聞けば聞くほど、不安が募る。
ヤキモチ妬く資格なんて、私にはないのに。
そのタイミングで、家のインターホンが鳴った。きっと亜子さんだ。
「はーいっ」と、パタパタ小走りでお母さんは玄関へ向かう。
束の間の2人きりの空間で、私はポツリと気持ちをこぼした。
「早く帰ってきてね」と。