飛鳥くんはクールなんかじゃない
「俺が不機嫌になったら、こうして」
「こ、こうって……?」
「ほら、花帆も手回せって」
……私はいったい、何をしているんだろう。
言われるがまま自分の手を飛鳥くんの背中に回すと、私もギュッと力を込めた。
ドキドキして、変なのに。頭は冷静なはずなのに。それなのに、なんだかすごく心地いい。
「ん、上手。わかった?」
満足そうな飛鳥くんの声が聞こえると、その距離はそっと離れた。
コクンと頷いて返事はするものの、ちょっと恥ずかしくて飛鳥くんの顔を見られない。
いままでもたくさん一緒に過ごしてきた。小さい頃は一緒にお風呂だって入ってたし、同じベッドで寝たりもしてた。
けど、なんか違う。抱き締めて抱き締められただけなのに、なんでこんなにドキドキしてるんだろう。