飛鳥くんはクールなんかじゃない
飛鳥くんに反抗期
(* 飛鳥 side **)
「はい、これ」
「……なに」
バイトが始まる少し前。
スタッフルームで着替える俺に、一成が何かを握りしめた手を突きつけてきた。
「昨日のお釣り。多くもらっても困ることくらい、働いてるお前ならわかるだろ?」
ぐいっと押し付けてくるそれは、昨日俺が一成に押し付けた千円札の残り分。
なんの変哲もないただの小銭なのに、見るだけで俺には後悔しかなかった。
「僕にまで嫉妬してたら身がもたないぞ、飛鳥」
「るさいな」
苦笑してからかってくる一成は、昨日あのあとに起こったことを知らない。
『もう知らない。1人で帰る』
初めて俺は、花帆を怒らせた。