飛鳥くんはクールなんかじゃない
わりと頭のいい女子校に通っているらしい彼女は、基本店にはいない。
手伝うのは土日や混んでいるときだけと聞いてはいたが。
「なにしてんの」
「へ……っ?あ、えと、夏休み明けすぐに試験があって……その勉強です」
「へぇ」
いつまで経っても、彼女とはほとんど目が合わない。いつも俺と話すときだけは吃っている。
理由はたぶん、初対面時に俺が線を引いたから。
普通に話してはくれるけど、きっとあのときのが尾を引いてるんじゃないかと思う。
一成の妹だから嫌われるのも困るが、正直親しくなりすぎにもなりたくない俺にはちょうどいいかもしれない。
「一華、お前普段こっちで勉強なんかしないだろ」
「き、気分だよ、気分」
「相変わらずだな、お前は」
彼女に呆れる一成の声を聞きながら、俺は仕事にとりかかった。