飛鳥くんはクールなんかじゃない


カフェにも行かない。似合わないっていうならオシャレもしない。


飛鳥くんがそれを求めるならって、嫌われたくない一心で、泣きそうになるのを我慢して笑ったのに。



『花帆に会いに来た』


そんなずるい言葉使って、おまけに……キス、だなんて。




「……っ、バカ。だからそんな顔すんなって」


少し顔を歪めた飛鳥くんの耳が、赤い。


クシャッと私の髪を撫でたその手があまりにも優しくて、涙が止まらなかった。



「なんで……っ?怒ってるの?……わかんないよ、飛鳥くん」


飛鳥くんがどういうつもりだったのかとか、いろいろ考えたくても、感情がぐちゃぐちゃで。



私、バカだから。単純だから。


そんなことされたら、勘違いしちゃう。



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