飛鳥くんはクールなんかじゃない
好き、という言葉が、もうそこまで出てきていた。……言えたら、どんなに楽だろう。
「花帆」
飛鳥くんが、優しい声で私の名前を呼んだ。
頭にあった手が、ゆっくりと私の頬へと移動する。
「俺の目、ちゃんと見て」
飛鳥くんのこんな声、初めて聞く。こんな、寂しそうな声。
……ずるい。
ゆっくりと視線を合わせると、心臓が跳ねた。ドク、ドク、うるさくて。
「あす……」
─────ガチャンッ
「ただいまーっ」
思わず言葉にしてしまいそうになったそのタイミングで、玄関から元気な声が聞こえた。