飛鳥くんはクールなんかじゃない



好き、という言葉が、もうそこまで出てきていた。……言えたら、どんなに楽だろう。




「花帆」


飛鳥くんが、優しい声で私の名前を呼んだ。


頭にあった手が、ゆっくりと私の頬へと移動する。



「俺の目、ちゃんと見て」



飛鳥くんのこんな声、初めて聞く。こんな、寂しそうな声。


……ずるい。



ゆっくりと視線を合わせると、心臓が跳ねた。ドク、ドク、うるさくて。



「あす……」


─────ガチャンッ

「ただいまーっ」



思わず言葉にしてしまいそうになったそのタイミングで、玄関から元気な声が聞こえた。



< 197 / 271 >

この作品をシェア

pagetop