飛鳥くんはクールなんかじゃない
ぜ、全然まだ心の準備ができてないのに……!
意外すぎる2人きりのこの状況に、さっきまでの勢いがなくなってしまいそう。
「あー……っと、とりあえず、リビングでも行く?」
気づかってくれたのか、飛鳥くんは頭をかきながらそう言った。
……やっぱり、部屋はダメなんだ。
こんなときまでそんなことを考える私って、なんなんだろう。彼女でもないのに。
靴を脱いで玄関を上がる。リビングに向かおうと背中を向けた飛鳥くんの服の裾を、ついぎゅっと掴んでしまった。
「……花帆?」
「あの、あのね」
足を止めてくれた飛鳥くんが、ゆっくり振り返ってくれた。
たぶんこっちを見てくれている。でも私は、飛鳥くんの顔を見れずに視線は床。