飛鳥くんはクールなんかじゃない



「飛鳥く……っ」

「黙って」


部屋に入ってすぐ、私は飛鳥くんの腕に包まれた。


伝わる体温。この心臓の音は、誰の音だろう。



「……どこで覚えたんだよ。男の煽り方」

「へ……?」

「俺との約束、二度も破った自覚ある?」



待って、と。

そう言うよりも先に、目の前には飛鳥君の顔があって。



「……キス、するよ?」


伏し目がちな飛鳥くんの瞳が、揺れて。


思わずぎゅっと目を瞑ると……、空気が動いて、額に飛鳥くんの唇が触れた。



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