飛鳥くんはクールなんかじゃない


***



「おかえり」

「っ……た、ただいま」


家に戻って自分の部屋のドアを開けると、ベッドの上に腰かける飛鳥くんがいた。



びっ……くりしたー。

飛鳥くんが私の部屋で待ってるの、忘れてた。



「なに」

「あっ、いや」

「もしかして忘れてたわけ?」


ギクリとしたところで、もう遅い。


さすがは飛鳥くん。私のことはなんでもお見通しだ。



ベッドに座る飛鳥くんの正面にまわって、ぎゅっと抱きしめる。いつかに本人から教わった、飛鳥くんのご機嫌とり。



「……なにこれ。こんなんで機嫌がよくなるとでも?」

「えっ、だって」


……が、前までは効果絶大だったはずのそれが、なぜか全く効かなかった。


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