飛鳥くんはクールなんかじゃない
階段を降りると、玄関にはお母さんと話をしている飛鳥くんがいた。
「お待たせ、飛鳥くん」
「……」
「飛鳥くん?」
私に気づいて顔を上げてくれた飛鳥くんは、一瞬めを見開いて固まる。
「まったく花帆ったら。また飛鳥くんを待たせて」
お母さんの小言が始まったけれど、それよりも私は飛鳥くんの反応が気になって仕方なかった。
似合ってない……かな、これ。
あまりにも飛鳥くんが何も言わないものだから、なにか失敗しちゃったんじゃないかと一気に不安になる。
「……変、かな」
「……あ、いや」
ハッとしたように口元を押さえた飛鳥くんは、「早く行くぞ」と先に玄関を出て行ってしまった。
そのことになんだかクスクスと笑うお母さんに行ってきますを告げて、私もあとを追う。