飛鳥くんはクールなんかじゃない
「飛鳥くんってば」
家の敷地を出て5歩くらい歩いたところ飛鳥くんの名前を呼ぶと、彼はピタリと足を止めた。
急にくるっと振り返る飛鳥くんと目があって、ビクッと背筋を伸ばす。
「……いいよ、それ」
「え?」
小さく呟いたその声は、上手く聞き取れなかった。
心なしか飛鳥くんの耳が赤くて、もう一度尋ねようと距離を一歩近づける。
すると、ギュッと手を握られて、指が絡まった。
「可愛い」
「……っ!」
今度こそしっかり届いたその声に、心臓がどくんと跳ねる。
き、急に……っ!
そんなこといきなり言われたって、なにも心の準備をしていない私には不意打ちすぎて。