飛鳥くんはクールなんかじゃない
「顔赤すぎだろ……」
「だ、だってっ」
「やめろ。俺まで照れる」
ふいっと視線を逸らした飛鳥くんの耳は、やっぱり赤い。
「理穂さんの前で言えるかよ」
「そ、そうだよね……っ、ごめん」
だから飛鳥くんは、私の質問に答えてくれなかったんだ。
カァッと上がった体温。たった少しの言動で私を一喜一憂させる飛鳥くんは本当にずるい。
「行こ」
お母さんの前では照れ隠しだったらしい飛鳥くんは、優しい口調で私の手を引いてくれる。
カランカランと下駄の立てる音だけが聞こえていたけれど、その手から飛鳥くんの気持ちが伝わってきて私の胸はもはやいっぱいだった。