飛鳥くんはクールなんかじゃない
「なに、海」
「あっ、そうだ忘れてた。アレ」
思い出したように、海が廊下を指差す。それを目で追って見えた状況に、思わずため息が漏れた。
「んな顔すんなって。可哀想だろ?」
「なんで海が俺を呼びに来るんだよ」
「だって頼まれちゃったから」
「……」
おちゃらけて笑う海に呆れすぎて、もう声に出すのをやめた。
気が乗らないが、重い腰を上げて足を教室の外まで運ぶ。
そこには、堂々と立った女子生徒が1人。上靴を見るかぎり、3年の人だ。
「なんですか」
「ちょっと、お話いい?」
やけに圧をかけてくるその人の話というのは、だいたい想像がつく。自惚れだとかそういうのではなく、ただただ面倒な予感というやつ。