飛鳥くんはクールなんかじゃない
沈黙を破ったのは、消え入りそうな一華ちゃんの声だった。
「ごっ、ごめんなさい……」
「ちょ、飛鳥くん!」
なんだかこっちまで申し訳なくなって、飛鳥くんに詰め寄る。
「そんな言い方ないでしょ?ほら、一華ちゃんに謝って!」
「……」
「飛鳥くんっ!!」
だんまりを決め込む飛鳥くんに、背伸びをして手を伸ばし、デコピンをお見舞いしてやった。
不機嫌を悪化させてしまうかもしれないと、内心ヒヤヒヤしながらの一か八かの賭け。
でも、初対面の女の子にそんな怖い顔したらダメに決まってるよ。飛鳥くん、本当そういうところわかってないんだから。
「……ってぇ」
「ほら飛鳥くん。一華ちゃんにごめんなさいは?」
我ながら小さい子を叱ってるお母さんの気分だ。
それでも効果はあったらしく、飛鳥くんは改めて一華ちゃんに顔を向けると、一言「悪かった」とだけ告げた。