飛鳥くんはクールなんかじゃない
偉い、飛鳥くん。ちゃんと謝れるじゃん。
……そう思ったのもつかの間。
「……帰るぞ、花帆」
褒めてあげようと笑顔を向けるそれよりも先に、私の手首は飛鳥くんによって捕まえられてしまった。
「え、ちょ、飛鳥くん!?」
「もう文句ないだろ」
それは、一華ちゃんに謝ったから、ということなんだろうか。
一華ちゃんにも凛ちゃんにもバイバイする暇すら与えられることなく、私はそのまま飛鳥くんに引っ張られ、お店から連れ出された。
素直になってくれたと思ったけど、飛んだ私の勘違いだ。
やっぱり不機嫌をこじらせてしまったらしい。
「あの〜……、飛鳥くん?」
様子を伺おうとそろーっと声をかけてみても、飛鳥くんはやっぱりなにも言葉を発さない。これはまずい。