飛鳥くんはクールなんかじゃない
そのまま電車に揺られ、家に着くまで、私の手首はずっと掴まれたままだった。
そしてさも当たり前のように私の部屋まで連れて来られると、やっと手が離された。
……心なしか、熱い。ずっと掴まれてたからかな。
「花帆」
「な、なに……」
静かに名前を呼ばれた。
それと同時に、飛鳥くんがしっかりと私の目を見た。
「怒るなよ」
その言葉が言い終わるよりも早く、次の瞬間、私は飛鳥くんの腕の中に引っ張り込まれてしまった。
包み込まれる体温。ギュッと力がこもっているはずなのに、苦しいどころか、むしろ心地よいとさえ思えてしまう。
「あ、飛鳥くん……!?」
「俺の機嫌、なおせよ」
「へっ!?」
抱き締められる頭上から聞こえるのは、さっきまでの飛鳥くんからは想像のつかないくらい優しい声。