飛鳥くんはクールなんかじゃない
「き、機嫌って……」
「教えただろ?」
わかってる。忘れたわけじゃない。
けど、こんな急に抱き締められて平静を保ってられるほど私は強くない。
なんだかすごく……、ドキドキする。
急だったからだよね、きっと。体が驚いてるんだ。……体温が上がっている気がするのも、きっとそのせい。
「花帆。早く」
急かしてくる飛鳥くんの声がなんだか意地悪で、私は無我夢中で彼の背中に手を回した。
こんなの……ドキドキしてるのバレちゃいそうだよ。
「も、もともとは飛鳥くんが悪いんだからね……っ。一華ちゃんにあんな言い方……」
それを必死に誤魔化すかのように、私は言葉を発する。
それでも飛鳥くんの腕が緩むことはなく、むしろさらにギュッと抱き締められた。