飛鳥くんはクールなんかじゃない
ふと机の上にあった写真立てが目に入った瞬間、ガチャリと部屋のドアが開く音がした。
「……何してんだよ」
「あ、飛鳥くん……。おかえりなさい」
入ってきた瞬間から伝わった。飛鳥くんが不機嫌なのが。
理由なんて、わかってる。私がいまこの瞬間、飛鳥くんとの約束を破っているからだ。
「花帆。……俺との約束、忘れた?」
「ううん。覚えてるよ。飛鳥くんとした約束は全部」
「だったら」
「でも、どうしても聞きたいことがあって……」
少しずつ自分の声が小さくなっていく。
あぁ、なんだか緊張が増してきた。やっと飛鳥くんに会えたのに。
「あ、あのね……っ」
こんな時間まで、どこにいたの?
掘田くん?菊川くん?
……一華ちゃんとも、一緒にいたの?
聞きたくてここまで来たのに、思うように口が開かない。