飛鳥くんはクールなんかじゃない
それを知った瞬間、なんだか頬が緩んだのが自分でもわかった。
「ん?佐藤さん、どうかした?」
「へっ!?……あ、ううんっ!なんでもないです」
菊川くんに異変に気づかれたけど、言えるわけがない。
飛鳥くんを、可愛く思ってしまった……なんて。
飛鳥くんが今まで拗ねることなんて、正直いくらでもあった。でもなんだか今回は、無性に可愛くて仕方ない。
全く深い意味なんてなく、咄嗟に掴んだ掘田くんの手。それで拗ねるって……。
「ごめんね飛鳥くん。ご機嫌なおして?ね?」
「……花帆、顔がニヤついてる」
「えっ……!?そ、そんなこと」
思いっきりいつも通りでなだめたつもりだったのに、どうやら飛鳥くんにはバレてしまうこの頬の筋肉の緩さ。
耐えてもバレるならと、逆ににこりと笑って誤魔化した。