願い婚~幸せであるように~
「そういえば、父さんが和花のプレゼン良かったと、褒めていたよ。前触れもなく見に来るのには困りものだけど、俺もよく出来ていたと思う。がんばったね」

「ありがとう」


茅島社長の突然の出現には驚いたけど、褒めていたと教えてもらえてうれしい。結果がとうであれ良い経験になった。もちろん良い結果であることを望むが。


数時間離れるだけなのに、幸樹さんは玄関で名残惜しそうに私を抱き締めた。


「今日はひと時も和花から離れないつもりだったのに」

「がんばってきてね。待ってるから」


つま先立ちで幸樹さんの頬にキスをして、微笑んだ。彼は目を細めてから、私の顎を上に向かせて唇にキスする。

昨夜から何回キスしたか分からなく、顔は緩みっぱなしだ。


「行ってくる」

「行ってらっしゃい」


キスされて、私まで離れがたくなり、結局エントランスでお見送りをする。駐車場まで付いて行きたかったが、さすがにここまででいいと笑われた。

どこまでも付いていこうとする私は、気付いたら車にも乗りそうな勢いに見えたのかもしれない。許してくれるなら、車に乗って『カヤシマ不動産』まで付いていってもよかったのに。

部屋に戻るとテーブルに置いたままだったスマホに着信があったことに気付く。

もしかして、早々と幸樹さん? と喜んだが、違った。メッセージも来ていたので、それに目を通してから電話をかける。
< 105 / 182 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop