願い婚~幸せであるように~
「もしもし、淳平?」

『おう、和花。今日は休みだよな? 家にいるなら、持っていっていい?』

「うん。下のロビーで受けとるから、着いたら連絡もらえる?」


幸樹さんが出て行ってから、二時間経過した頃に淳平が訪れた。幸樹さんが在宅しているなら、部屋に招いてもよかったが、留守なのでロビーで会うことにする。

この前は留守でも入ってもらっていいと考えたが、淳平や幸樹さんの気持ちを聞いて、考えをあらためた。


「旦那さん、いないの?」

「うん。急用で会社に行ったの。わあ、ありがとう! あとで幸樹さんと食べるね」

「おう。貰い物だから、気にせず食べて。ひとりで暇なら、昼ごはんでも食べに行く?」

「あー、ごめん。お昼くらいには帰れると言っていたから多分そろそろ帰ってくると思うんだよね。で、ごはんは幸樹さんと食べるつもりで」


貰い物とはいえ、わざわざ私の好きなカステラを持ってきてくれたから、すぐに帰すのは申し訳ない。

だけど、先約は幸樹さんだし、私が今優先するのは幸樹さんだ。彼が帰ってくるのが待ち遠しい。


「そうか。なら、帰るよ。和花が幸せそうで安心した。今めちゃくちゃいい顔してるじゃん」


茶化すように言った淳平だったけど、寂しそうな笑みを浮かべて、帰って行った。
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