願い婚~幸せであるように~
「あれ、和花?」

「あ、おかえりなさい」

「出迎えにしては、タイミングが良すぎるけど……ん? 誰か来てた?」


タイミングよく帰ってきた幸樹さんの視線は私の顔から下へ移っていき、手に持っていた紙袋で動きを止めた。


「うん。淳平がカステラをもらったからと持ってきてくれて、さっきここで受けとったばかり」

「わざわざ来てくれたなら、上がってもらったら良かったのに」

「え、だって……」

「あー、そうか。和花は俺に気遣ってくれたんだね。ありがとう」


柔らかく笑った幸樹さんは紙袋を持っていない方の私の手を握って、エレベーターへと導く。

淳平が帰っていく姿を見て、寂しくなったけど、幸樹さんに手を握られて寂しさはどこかに消えていってしまった。淳平、ごめん。


「お昼はパスタにしようかとソースだけはもう出来ているけど」

「いいね、食べたい。じゃ、それを食べてから出掛けようか」

「うん、それでね。映画じゃなくて、水族館行きたいと思ったんだけど」

「水族館か。うん、水族館にしよう。俺は和花といられるなら、どこでもいいよ」


私の気持ちを優先してくれる幸樹さんは優しい。毎日忙しくしていて帰りも遅いから、歩き回るところは疲れるかなと思ったけど、課長からこの前行ってきて楽しかったと聞いていて、幸樹さんと行きたくなった。
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