願い婚~幸せであるように~
「母さん、大丈夫?」

「うん。わざわざ来てくれて、ありがとう。和花ちゃんもありがとうね」


安心させようと笑顔を見せるが、痛むのか声のトーンがいつもより低くて弱々しい。幸樹さんがすみれに症状を訊ねる。


「頭を打ったから、CT検査したほうがいいんじゃないかと聞いたら、意識がハッキリしているからいらないでしょうと言われたの。でも、落ちた時にすごい音がしたから心配で検査してもらったのよ。異常はなかったけど、お父さんが大事を取って入院させるって」

「父さんは?」

「先生と話してる。あ……」

「なに?」


すみれが口を手で押さえたから、幸樹さんが怪訝そうに聞いた時、ドアが開いて二人の男性が入ってきた。

ひとりは茅島社長で、もうひとりは白衣を着た医師。


「ああ、幸樹と和花ちゃんも来てくれたんだね」

「すみれの話ではたいしたことなさそうだけど、本当に大丈夫なの?」

「ああ、大丈夫だ。今、園本先生にも話を聞いたし」

「えっ?」


幸樹さんが一瞬固まってから、私を見た。園本の名前に動揺したのが分かった。私も同じだったからだ。

『外科部長』という役職の下に『園本』と書かれたネームプレートを見てから、顔をしっかりと見る。
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